ミサワホーム

耐震・断熱の高い安全安心して子育てを育める住宅を紹介する宅地.net

第2回 宅地と防災

 地震、津波、火山、台風、竜巻など、自然の驚異を伝える記事は、有史以来数多く記録されている。
 「自然の営みを予め察知しその猛威に備える」という試みが人間と自然の闘いであり、人類の歴史でもあった。
 災害に備えて、予め心くばりをする。対策を施す。
 あるいは、予知の術を心得、身の安全をはかる。近年では、科学的な予知技術のもとに警報を受け、わずかな時間的猶予のなかで生命を守る。
にもかかわらず、予期せぬ事態が日常の生活を襲い、一瞬のうちに生命や財産を奪う。

 阪神・淡路大震災(1995年1月)以来、地震被害の報道のなかで、老朽化した建物の倒壊した隣接地に、目立った損傷もなく建っている工業化住宅を見ると、住宅がいかに強くなったかということを感じさせられる。
 今では、建築基準法に性能規定(1998年)が導入され、工業化住宅に限らず、在来木造をはじめ、どの工法でも同様の性能が確保されるようになってきている。

 しかし、建物を強くすれば、住まいの地震(災害)に対する対策は万全であるといえるであろうか。
 2004年、2007年と新潟県では、新潟県中越地震(2004年10月)、新潟県中越沖地震(2007年7月)と、大きな地震が2件続いた。その、実例を見てみよう。

 地震発生のメカニズムは地殻に蓄積された歪みのエネルギーが解放されることによって起こると説明されている。このエネルギーが地表面のミクロな部分である「宅地」に伝わると、地盤の振動と地盤のズレという現象になる。

 振動は建物と地盤を揺るがし、地盤の液状化を惹き起こす。また、地盤のズレは宅地と基礎に亀裂を生じさせ、建物を動かす。

%E3%80%90%E5%86%99%E7%9C%9F1%E3%80%91%E3%80%80%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E4%B8%AD%E8%B6%8A%E6%B2%96%E5%9C%B0%E9%9C%87%EF%BC%882007%EF%BC%89%E3%80%80%E6%9F%8F%E5%B4%8E%E5%B8%82%E6%9D%BE%E6%B3%A2.jpg
写真1 新潟県中越沖地震(2007)柏崎市松波

 [写真1]は、宅地に液状化が起こった例である。建物の中央付近で、敷地境界との間と手前の植え込みで陥没が起こっている。
 また、液状化で吹き出た泥土が敷地全体を覆っている。雪の上を歩いたかのように、泥土に覆われた敷地のうえを、足跡が奥の庭のほうへ続いているのがわかる。隣の敷地も同様である。
 この建物の地震による損傷は軽微であった。しかし、新築でありながら、地盤の液状化により建物そのものが5cmほど傾いている。
 振動で液状化が起こり、地盤が波打ち、あたかも水面に建物が浮かんでいるようにゆれ、揺れが収まった後、建物が傾いているということである。

%E3%80%90%E5%86%99%E7%9C%9F2%E3%80%91%E3%80%80%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E4%B8%AD%E8%B6%8A%E6%B2%96%E5%9C%B0%E9%9C%87%EF%BC%882007%EF%BC%89%E3%80%80%E6%9F%8F%E5%B4%8E%E5%B8%82%E5%8C%97%E5%9C%92.jpg
写真2 新潟県中越沖地震(2007)柏崎市北園

 さらに、地盤は地震の振動で左右前後に動き、亀裂が生じ、宅地は伸び縮みする。[写真2]は、玄関ポーチと踏み石の部分である。10cm弱、ずれたことがわかる。

%E3%80%90%E5%86%99%E7%9C%9F3%E3%80%91%E3%80%80%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E4%B8%AD%E8%B6%8A%E6%B2%96%E5%9C%B0%E9%9C%87%EF%BC%882007%EF%BC%89%E3%80%80%E6%9F%8F%E5%B4%8E%E5%B8%82%E7%B7%91%E3%83%B6%E4%B8%98.jpg
写真3 新潟県中越沖地震(2007)柏崎市緑ヶ丘

 [写真3]は、地盤に亀裂が入り、地下埋設の配管等が露出している。また、地盤が外に押し出され、擁壁が道路側に傾いている。

%E3%80%90%E5%86%99%E7%9C%9F4%E3%80%91%E3%80%80%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E4%B8%AD%E8%B6%8A%E6%B2%96%E5%9C%B0%E9%9C%87%EF%BC%882007%EF%BC%89%E3%80%80%E6%9F%8F%E5%B4%8E%E5%B8%82%E6%9D%B1%E3%81%AE%E8%BC%AA%E7%94%BA.jpg
写真4 新潟県中越沖地震(2007)柏崎市東の輪町

 [写真4]は、陥没によって、地盤が隣地境界のブロック塀を押し出し、ブロック塀が隣地敷地内に大きく傾いている。

 地震の前と後では、宅地の形が変わることがわかる。宅地の修復に建物と同様に時間と費用を要することになる。
 
 山を切り崩し、谷を埋めて造成された宅地では、造成による被害をうける場合もある。

%E3%80%90%E5%86%99%E7%9C%9F5%E3%80%91%E3%80%80%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E4%B8%AD%E8%B6%8A%E5%9C%B0%E9%9C%87%EF%BC%882004%EF%BC%89%E3%80%80%E9%95%B7%E5%B2%A1%E5%B8%82%E9%AB%98%E7%94%BA.jpg
写真5 新潟県中越地震(2004)長岡市高町

%E3%80%90%E5%9B%B3%E3%80%80%EF%BC%91%E3%80%91%E3%80%80%E8%85%B9%E4%BB%98%E3%81%91%E5%9E%8B%E9%80%A0%E6%88%90%E5%AE%85%E5%9C%B0%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%80%80%EF%BC%BB%E4%BD%9C%E5%9B%B3%EF%BC%9A%28%E6%9C%89%EF%BC%89%E3%82%A2%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E8%A8%AD%E8%A8%88%20%E9%AB%98%E4%BF%A1%E6%AD%A3%E9%81%93%EF%BC%BD.jpg
図1 腹付け型造成宅地のイメージ[作図:(有)アディック設計 高信正道]

[写真5]は、高台の住宅地で起こった災害である。(図1)でみるように、腹付け型の盛土に擁壁を施した宅地造成地である。地震の結果、腹付けの部分が大きく崩落し、谷底に崩れ落ちている。
 幸いなことに、腹付けの部分に道路が取り付けられ、切土の部分に宅地があったため、住宅の被害は最小限に抑えられた。
 しかし、写真からわかるように、庭の芝生の一部が崖崩れに引きずられ、宅地の形状は変わってしまっている。

 宅地の地盤改良のための技術開発は行われており、また、既存の造成宅地の所有者に対しても宅地の保全の義務が付されるような宅地造成規制法の改正もなされている。
 こうした災害に耐える宅地のあり方について対策が練られているということである。

 しかし、相手は地表面であり、自然である。予期せぬことが起こりえるということを忘れてはならない。
 例えば、新潟県中越沖地震(2007年7月)で、柏崎市内の海岸部の丘陵地帯で液状化が起こり住宅地に大きな被害が発生した(前掲写真)。
 もともと河川と海流によってできた砂丘地帯であり、地下水位が低いため、液状化しないであろうと考えられていた地盤であった。
 しかし、地震の前日まで6日間にわたり降り続いていた雨で、地下水位が上昇し、地震の結果、液状化に繋がったと考えられている(注1)。
 その時の気象条件、地盤等の状況によって、地震の規模から予想される被害以上に、被害が大きくなることもある。これは、複合災害の例といえよう。

 近年、巨大地震の可能性と被害予想を伝える報道を頻繁に見かけるようになった(注2)。しかし、個別の建物、個別の宅地を考えると、「自然の力は人知の及ばぬところ」というようにも思える。
 財産を守るために強固に造った住宅が、壊れないまでも、宅地の崩壊によって住むことのできない建物になることが実際に起こっている。
 
 住宅は生命の安全を守るシェルターであり、運がよければ、良好な宅地を選択し、そのうえに建てたことによって財産の価値も守れる建物として機能するかもしれない。
 70年代、建築基準法は、「生命を守り、安全に避難ができる程度の強度の建物を実現するための制度である」と教えられた。しかし、現在、生命の安全以上のものを建物に期待しているように思われる。

 「宅地」は自然が支配するものである。制度が変わっても、宅地の存在は変わらない。
 とはいえ、宅地の上に住まいを建てるとき、この抗いがたい自然の猛威と共存するということはどういうことか。
 住まう人が宅地を選択するとき、その人の価値判断にしたがうであろう。しかし、その価値観は多様である。


(注1)「中越沖地震:安全とされた砂丘地帯上部で液状化 学会調査」
(2007.10.8)毎日新聞。
(注2)例えば、「M9―超巨大地震」(2007.10)ニュートン、
「東海地震:5000年に4回『超巨大型』産総研など調査」(2,007.10.18)毎日新聞。
【写真】(株)ミサワホーム総合研究所:撮影

2007年10月31日更新

三木 富士夫

プロフィール

三木 富士夫

1948年生。83年4月株式会社ミサワホーム総合研究所入社。
(株)ミサワホーム総合研究所、(財)住宅都市工学研究所で
「まちづくり・住まいづくり」の調査・研究開発を行う。

同時に、ミサワホーム株式会社、ミサワシティ(株)等関連会社と
併任・兼務し、都市開発、区画整理、再開発等の事業プロジェクトを
推進、事業プロジェクト、まちづくり、医療・介護施設等の企画を行う。

現在、株式会社ミサワホーム総合研究所 理事。
東京大学都市工学科大学院博士課程修了。工学博士。一級建築士。

【趣味】 自然観照、散歩、読書。

宅地.net 市川南行徳住宅地
ページ先頭に戻る