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第11回 宅地開発と農地

 市街化区域内の農地の効用は、多岐にわたる。

 都市計画法では、都市計画区域が定められ、「無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図る必要があるとき市街化区域と市街化調整区域」に区分(区域区分)される。さらに、市街化区域は「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」であり、市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」と定められている。

 もともと、農地は市街化区域から排除される土地利用である。が、往々にして、市街化区域を定める過程で、小規模農地が市街化区域に組み込まれる。
 この小規模農地は、「10年以内」にも「計画的」にも、宅地化され、都市的土地利用に転用される保証はない。

 1991年生産緑地法の改正に伴い、「宅地化する農地」と「保全する農地」とに区分され、後者は「生産緑地農地」の指定を受けることになった。同時に、三大都市圏では、「宅地化する農地」には固定資産税、都市計画税に宅地並みの税が課されている。

 こうして、市街化区域内農地の宅地化が促進される手だてが講じられているわけである。

 市街化区域内の農地は、1991年全国の市街化区域面積の約12%を占めていたが、2004年には6%程度に減少している。
 この傾向は三大都市圏で著しく、市街化区域内の農地面積が2004年には1991年の46%、34,694haにまで減少している。半分以下になったということである。このうちの42%が生産緑地であり、年々徐々にその比率が高まっている。
 同様に、地方圏では、70%、54,517haで、30%の減少であった(注1)。
 
 住宅が余ってきたとはいえ、地域的に見れば、必要なところに必要な住宅や施設などの用地として、この宅地化農地が果たした意義は大きかったといえよう。

 しかし、一方で、市街化区域の宅地化が進み、建物密度が高くなるにしたがい、市街化区域内農地が環境保全の緩衝帯としての役割を増してきているとも考えられる。
 生産緑地を含め市街化区域農地の活用方法が課題になる。

 市街化区域農地の周辺は、往々にして、道路が不整形であったり、道幅が狭いという基盤整備の行き届かない地域であることが多い。
 また、基盤整備をせずに宅地化することで、宅地の環境を整えられないこともしばしば起こるところである。
 
 このような問題を抱えた地域の整備手法に、敷地整序型の小規模土地区画整理事業がある。

 (図6)は、生産緑地、宅地化農地、それに既存宅地、未利用地を取り込み、個人施行(共同施行)の土地区画整理事業によって宅地開発をした例である(注2)。わずか6,620㎡の小さな開発であるが、施行前の状況を見ると、宅地化農地、生産緑地、未利用地に、道路付けが難しいことが理解できるであろう。

 施行後、宅地が約3,500㎡に増え、いずれの敷地も接道条件が良好になっている。

 生産緑地は、減歩によって990㎡の面積が660㎡に減少したが、街区の中央に位置することで開放的な空間を提供している。さらに、生産緑地の指定期間終了後には、土地利用の転換が無理なくおこなえる形状となっている。

 敷地内道路が東と西の地域道路に接道することによって東西両地区が結ばれ、防災上の安全や避難経路にも、地域コミュニティの形成にも有効に機能することが期待されるようになったといえよう。

 この土地区画整理事業の事業費は、2宅地の宅地(保留地)の処分によってまかなわれたが、残りの20宅地と生産緑地は換地として元の地権者である土地所有者に帰属した。

 土地所有者は、換地を受けたこれらの宅地を自由に活用することができる。例えば、売却して金融資産に変える。定期借地としてあるいはアパートなどの貸家を建て賃貸経営を行うなどである。

 この小規模な土地区画整理事業には、土地の入れ替えに伴う譲渡所得税や不動産取得税、登録免許税が非課税になるなど税制上の優遇措置などの制度的支援があり、一般の宅地開発と比べると事業上有利な点がある。

 近年、残存する宅地化農地を見ると、道路の接道が取れなく、宅地化が困難な農地が多くなっている。
 あるいは、宅地化はされたが、未利用地のままであるとか、駐車場として基盤整備のないまま利用されているものも多い。

 このような宅地化農地、未利用地などを取り込んだ土地区画整理事業がおこなわれることを通じ、市街地の環境改善が図られることが期待されている。
 
 また、住宅が余っている時代を迎えたことを鑑みると、宅地化が困難な市街化区域内農地を、建物密度の高い市街地の中にあって、ゆとりの環境づくりの緩衝帯として、かつての武蔵野の雑木林や里山の原風景に回帰させることができたならば、とも考える。

 市街地化区域内農地は、市街地の環境改善を図るうえで、貴重な資源となっていると考えてよいであろう。

  (注1)(財)都市農地活用支援センター「市街化区域内農地の動向」より推計
  (注2)世田谷区北烏山7丁目土地区画整理事業(共同施行)。1997年、当時の緑住土地区画整理の補助事業として施行された。

2006年12月21日更新

三木 富士夫

プロフィール

三木 富士夫

1948年生。83年4月株式会社ミサワホーム総合研究所入社。
(株)ミサワホーム総合研究所、(財)住宅都市工学研究所で
「まちづくり・住まいづくり」の調査・研究開発を行う。

同時に、ミサワホーム株式会社、ミサワシティ(株)等関連会社と
併任・兼務し、都市開発、区画整理、再開発等の事業プロジェクトを
推進、事業プロジェクト、まちづくり、医療・介護施設等の企画を行う。

現在、株式会社ミサワホーム総合研究所 理事。
東京大学都市工学科大学院博士課程修了。工学博士。一級建築士。

【趣味】 自然観照、散歩、読書。

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