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第8回 宅地開発と宅地の配列

 都市の住まいの分布をみてきたが、住まいの分布、形式は多様である。地域によってその住まいに特徴のあるパターンが認められる。それぞれの地域の住まいがつくられた歴史を背景に、なおかつ新しい時代の要請に応えながら、住まいの形式が引き継がれているのであろう。
 
 さらに、「まち並み」の形、「街区」の形は道路パターンに左右され、複雑である。ましてや、宅地の形は多様であり、矩形とは限らない。不整形な四角形、多角形、三角形や凹凸のある多角形など様々な形がある。敷地の境界が曲線のこともある。

 震災復興、戦災復興あるいは防災や道路事情などから土地区画整理事業が施行された地域の道路パターンは整然としている。したがって、街区や宅地の形も整然としている。しかし、時間がたつと、土地所有者の事情から宅地の細分化が進み、宅地の形は多様になってくる。

 一方、道路の形状が複雑で、道路が入り組んでいるまち並みがある。かつての畦道や畑道あるいは丘陵や林をぬう道がそのまま生活道路になった地域である。道幅も狭く、迷路のような街区を構成している。街区の形状は複雑である。
 
 複雑に見える「街区」の構成も、道路と宅地との関係から整理すると、意外に単純な形に置き換えることができる。
 (図3)に示した宅地の配列をみていただきたい。図は単純化の為に直線道路に接する矩形の宅地を仮定して描かれている。

図3.jpg
(図3)宅地配列の基形


 ひとつは、道路に並列に宅地がならぶパターン(a)である。

 2番目は、道路に直角に宅地がならんでつくられるパターン(b)である。いわゆる、「路地状敷地(旗竿宅地)」とよばれている。道路沿いの宅地の脇に通路(路地)があり、前面の別の宅地の裏に宅地がつくられているような場合がそれである。
 この路地の幅は建築基準法では最低2mと定められている。道路に2m以上接道しなければ住宅は建てられないということである。

 道路の形状によって、宅地には、並列にならぶ宅地以外に角地や三角地などといろいろな形が生じる。しかし、例えば、角地も曲がった道路を真直ぐに引き伸ばしたと仮定すれば、並列な宅地の配列に変わる。

 単純化してみると、街区は(a)、(b)のふたつのパターンの並びで構成されているといってよい。

 旗竿宅地がふたつならぶと(b’)のパターンになる。この宅地配列のさらに奥に、道路に直角に宅地がつくられるとパターン(c)のような袋路となる。

 (b’),(c)の事例は、小規模な宅地開発でよく見かける。
この袋路(c)は大規模宅地開発でも取り入れられる設計技法であり、「クルドサック」とよばれている。
 通過交通の車両が進入してこないことから、安全で静かな環境が確保される目的で採用される手法である。

 (図4)は、(図3)の(a)(b)(b’)(c)を組み合わせて四つの街区を例示したものである。

図4.jpg
(図4)基本形による街区の構成例


 (ⅰ)は(a)と(b’)との組み合わせで街区を構成した例である。街区内の宅地占有率を高くする手法である。
 (ⅱ)は(a)と(c)とを組み合わせたもの。(ⅲ)は街区の取り付け道路にループ上の道路を街区に引き込み、(a)の宅地パターンで街区を構成したものである。
 (ⅳ)は(ⅲ)の街区をふたつ合わせてループ状の宅地配列を構成し、街区の通り抜けを可能にした宅地パターンである。

 ここで示した街区は、宅地開発の典型的な宅地パターンである。
 開発地の敷地形状が不整型になると、袋路の形が折れ曲がり、多様な形状の宅地がつくられることになる。(図5)は、前回例示した写真(都市住宅と宅地開発―永福町)の宅地開発図である。

図5.jpg
(図5)都市住宅ー永福町開発図


 一般の市街地では、道路形状が複雑であるが(図3)の(a)(b)の宅地配列を基本形にして、(b’)(c)を派生的な宅地配列として街区の宅地パターンが構成されている。
 道路の形状によって、(図4)で示した街区の形が不整形になる。同時に、宅地の形状が不整型になり、多様な宅地が出現することになる。

 宅地は、道路に接道していなければ建物が建たない。(b)の旗竿宅地も(a)の並列的配列の宅地も、道路に接道していることに関しては、同じ条件にあるともいえる。
 道路を「枝」に見立てれば、宅地は枝にぶらさがる葡萄に例えることができる。住宅地は葡萄の房(クラスター状)のように形成されているということである。

 土地の高度利用が図られる。土地が細分化される。遊休化した土地に宅地開発がほどこされる。宅地につくられる住宅群は相互により近接度を増す。
 都心部、都心周辺部、近郊部において、土地利用の転換が図られることで、土地利用の高密化が進行してきた。

 狭い敷地、高密度の環境に位置する都市の居住空間には、住戸と住戸の間に干渉となる空間を置くゆとりがない。内部の居住空間は、直接、外壁によって外部から遮断することが必要となる。

 さらに、内部の居住空間は、時には狭く、必要かつ十分な独自の領域を創るために、満足する手だて講じ、工夫しなければならない。差し迫って必要の無い行為を実現する場は、他所に求めることになる。
 ここに住む人の価値観が加わり、住まいの選択に差異が生まれる。

2006年10月26日更新

三木 富士夫

プロフィール

三木 富士夫

1948年生。83年4月株式会社ミサワホーム総合研究所入社。
(株)ミサワホーム総合研究所、(財)住宅都市工学研究所で
「まちづくり・住まいづくり」の調査・研究開発を行う。

同時に、ミサワホーム株式会社、ミサワシティ(株)等関連会社と
併任・兼務し、都市開発、区画整理、再開発等の事業プロジェクトを
推進、事業プロジェクト、まちづくり、医療・介護施設等の企画を行う。

現在、株式会社ミサワホーム総合研究所 理事。
東京大学都市工学科大学院博士課程修了。工学博士。一級建築士。

【趣味】 自然観照、散歩、読書。

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