第6回 都市の住まいと分布(1)
東京駅からJR中央線に乗る。車窓からまち並みを眺めると、高層のオフィス、商業施設などが入ったビル、マンションなど、新旧さまざまな、多様な形、色の建物が目に入る(注1)。
神田、御茶ノ水、四谷。新宿を過ぎ、電車が高架を走るようになると、新宿の超高層街を遠望して、中層の住居やオフィス・商業に利用される建物の間に次第に低層の住宅が現れてくる。
![]()
(Photo by (c)Tomo.Yun http://www.yunphoto.net)
中野を過ぎると、高円寺、阿佐ヶ谷。駅の周辺と青梅街道沿いの中層の建物に取り囲まれたエリアは、低層の戸建住宅が甍をならべ、街区を埋めている。
更に、郊外にいたると、大規模な宅地開発の行われた丘陵地に戸建住宅が建ち並び、その中に、時折、中層のマンションや学校の建物が目につく、といった風景に変わる。
東京駅から離れるにしたがい建物は低くなり、小さくなるのを見るであろう。
また、東京駅と新宿駅の間には、オフィス、商業施設などの多様な用途の建物が見られるにもかかわらず、住居系の建物はほとんど無い。時折、マンションを見かける程度である。
住居系の建物は東京駅周辺部のような中心地にはないのであろうか。
例えば、東京駅の八重洲中央口を出て、目の前の八重洲通をまっすぐ東に進む。両側はオフィスビルがたちならび、500mほど歩くと昭和通に到る。昭和通沿いもオフィスビルが林立している。昭和通をわたり、なおも八重洲通を進む。と、ちらほらとマンションが現れてくる。新大橋通との交差点が、八重洲中央口からほぼ1kmの距離となる。ここから、さらに1km先に、大川端リバーシティがある。東京駅からわずか500mか、1kmで住居系の建物が現れてくる。
八重洲中央口を中心とした半径1kmのエリアは、江戸時代のいわゆる(お城)下町の南部にあたり、町家の集積地であった(注2)。当時、ここは、商業、生産活動の拠点であり、今に至るまで日本の商業の中心地として引き継がれてきている。
中央区は、この地域に高容積の商業地域を指定し、同時に防火地域を指定している。したがって、外堀通、中央通、昭和通、新大橋通、八重洲通の沿道には耐火建築の中高層のオフィスビル、商業施設のビルが建ち並んでいる。同じ用途でかつ似た形の建物が、軒を並べているという、印象を受ける。
しかし、昭和通をわたった東側では、幹線道の裏、路地に入り、街区の内側を眺めると、店舗と併用、作業場と併用などの住居系の建物が多く見かけられる。耐火建築が要求されている地域であることから、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の中層建物に建替えられているものも多い。
中には、木造の建物を住まいと併用して店舗や作業場に使用している年季の入った建物もある。また、商売をやめた建物もある。住まい方、建物の用途は多様であることがうかがえられる。
更に、高容積を活かし、低中層部を店舗や、オフィスに利用し、最高部に住まいを構える建物もある。屋上には緑が見られるから、おそらく屋上庭園を造っているのであろう。立ち戻って、昭和通から八重洲口に近いエリヤ(500m以内)の街区の中に入ると、やはりこのような建物をいくつか見つける事ができる。
因みに、東京駅八重洲口から半径1km以内に、公立小学校が3ヶ所ある。生徒数は100~200人程度で、いずれもそれほど多くない。住まいに利用される建物は比率では少ないが、それでも家庭を営む住宅があるということである。
すべての建物が、住まいを含まない用途で構成されている街区という例も少ない。計画的に街区が作られた丸の内ぐらいであろうか。聞くところによると、丸の内の再開発に合わせて、「丸の内に住宅を造るとしたならば、どのような住宅がよいか」という勉強がされているという。
新大橋通を越えて、さらに中心地から離れると、店舗、作業場併用の木造あるいは鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの低層併用住宅が混在した多様な用途の街区が形成される。その中には廃業して専用住宅に転用したもの、アパート、マンションに建替えた建物などが混在するようになる。
このようなエリアは、京橋、日本橋から神田川、隅田川をわたり、台東区、江戸川区、墨田区と広がっていく。いわゆる、「下町」である。
新宿駅でも同様の傾向が見られ、新宿駅の中央から1kmの範囲には、やはり3ヶ所の小学校がある。計画的に整備された都庁周辺の超高層街を除くと、やはり500mを超えるあたりから、オフィス、店舗、作業場併用の住まいをかねる多様な建物が多くなり、駅より離れるほど建物は低層になりかつ様々な構造の建物となる。
鉄道駅はJRに限らない。東京都心部は縦横に地下鉄が張り巡らされ、いたるところに駅が開設されている。今後、ますます、駅周辺は中高層化し、多様な用途の建物で高密化するとも考えられる。同時に、住まいの形式も多様化するのであろう。
(注1)国土地理院1万分の1の地形図「日本橋」新宿」「中野」を広げて、まち並みを思い浮かべると興味深いものがある。
(注2)「江戸切絵図」(2003)人文社
2006年9月28日更新

1948年生。83年4月株式会社ミサワホーム総合研究所入社。
(株)ミサワホーム総合研究所、(財)住宅都市工学研究所で
「まちづくり・住まいづくり」の調査・研究開発を行う。
同時に、ミサワホーム株式会社、ミサワシティ(株)等関連会社と
併任・兼務し、都市開発、区画整理、再開発等の事業プロジェクトを
推進、事業プロジェクト、まちづくり、医療・介護施設等の企画を行う。
現在、株式会社ミサワホーム総合研究所 理事。
東京大学都市工学科大学院博士課程修了。工学博士。一級建築士。
【趣味】 自然観照、散歩、読書。

