第4回 都心居住
都心、東京都中央区の場合、1955年以来減少を続けてきた人口は1997年をボトムにして、以後、増加に転じた。都心回帰が、数字の上で顕在化したということである(図1)。近年の産業再編にともない、都心やその近傍に位置する工場、倉庫などの施設が移転、転業、廃業する中で、跡地が住宅開発に供された結果である。
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(図1)東京都中央区人口推移[中央区:住民基本台帳各年1月1日]
都市のなかの活力のあふれた地域では、土地利用の用途は混在しており、多様な機能を持っている。
J・ジェコブスは(注1)、地域の活力は地域の多様性から生じるとしており、その地域の多様性を生じさせる条件を四つあげている。
ひとつは、地域は、本来の基本的機能だけでなく(単一ではなく)、二つ以上の機能を保持していなければならない。
ふたつは、街区を形成するブロックが小さくなければならない。
三番目に、生みだされる経済的利回りに変化を添えるように、適度の割合で、建てられた年代や状態のいろいろ異なる建物が混合していなければならない。
四番目に、住むことを含め、目的が何であろうと、人口が十分に密集していなければならない。
という趣旨の条件を述べている。
都心回帰をもくろむ人たちは、前回述べた高齢者のほか、単身者、子供を持たない夫婦、ファミリーと多様な層にわたっている。
ジェコブスの示した多様性のひとつ目の条件と対比してみると、地域のもつ基本的機能に、目的の違った人たちの行動、いくつもの世代のそれぞれの違った行動、違った時間帯での行動が、基本的機能に別の機能を付与している。換言すれば、都市の施設の本来の用途に対して、別の使われ方がされているという事である。
都心回帰をする人たちは、その可能性を求めて、都心に住まいを求める。つまり、それが、文化施設であり、商業施設であり、医療・介護施設などなどである。歩き回りやすく、いろいろな施設が集積しているということは、一言で言えば、便利であるという事である。
都市のそのような地域は、居住者が増加する事でますます活性化する。
大都市圏において、都心回帰の様相をよくみると、郊外に住む人が、直接、都心に住まいを移すという例は比較的少ない。住まいの住み替えは、前住地に比較的近いところに新しい住まいを求める傾向がある。前住地と新しい住まいとの距離は、4~10km程度が多い。比較的近傍に、新しい居住地となる多様性の高い地域を選択しているといえる。
大都市圏全体を見ると、このような住み替えが起こった結果、少しずつ人口が都心に移動し、都市がコンパクトになりつつある。
(注1)Jane Jacobs (1961) “The Death and Life of Great American Cities” Vintage Books 【黒川紀章訳「アメリカ大都市の生と死」鹿島出版(1977)】
2006年8月31日更新

1948年生。83年4月株式会社ミサワホーム総合研究所入社。
(株)ミサワホーム総合研究所、(財)住宅都市工学研究所で
「まちづくり・住まいづくり」の調査・研究開発を行う。
同時に、ミサワホーム株式会社、ミサワシティ(株)等関連会社と
併任・兼務し、都市開発、区画整理、再開発等の事業プロジェクトを
推進、事業プロジェクト、まちづくり、医療・介護施設等の企画を行う。
現在、株式会社ミサワホーム総合研究所 理事。
東京大学都市工学科大学院博士課程修了。工学博士。一級建築士。
【趣味】 自然観照、散歩、読書。

